医師が解説!症状・治療ガイド

医師が解説!症状・治療ガイド

⑥ コレステロール異常(脂質異常症)の治療と管理法

高コレステロール、いわゆる「脂質異常症」は、日本人の生活習慣病の中でも特に多いとされます。放置すると全身血管の動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気を引き起こすため、早期発見と適切な管理が極めて重要です。本記事では、コレステロール異常の原因、診断基準、治療法、そして当院でのサポート体制について詳しく解説します。

【脂質異常症とは】

脂質異常症とは、血液中の脂質(コレステロールや中性脂肪)のバランスが崩れた状態を指します。具体的には、以下のいずれかを満たす場合に診断されます。

  • LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が140mg/dL以上
  • HDLコレステロール(善玉コレステロール)が40mg/dL未満
  • 中性脂肪(トリグリセライド)が150mg/dL以上

これらの値が慢性的に高い、または低い状態が続くと、血管の壁の内側にプラークがたまり、時間をかけて動脈硬化が進行していきます。ある程度まではゆっくりと進行するのですが、一定レベルを超えると炎症を伴い薄くなった壁が突然破れ、ドロドロのプラークが血液中に流れ込み血栓を形成し、突然血流が遮断されることにより急性心筋梗塞や脳梗塞を発症します。

【放置するリスク】

脂質異常症を放置すると、上記のメカニズムにより、以下のような疾患につながるリスクが高まります。

  • 狭心症:冠動脈が狭くなり、胸痛や息切れを起こす状態
  • 心筋梗塞:冠動脈が詰まり、心臓の筋肉が壊死する病気
  • 脳梗塞:脳の血管が詰まり、麻痺や言語障害を引き起こす
  • 閉塞性動脈硬化症:足の血管が詰まり、歩行困難や壊死を招く
  • 慢性腎臓病:腎臓の機能が徐々に低下し、血液透析を要することもある

【治療と管理法】

脂質異常症の治療は、まず生活習慣の改善から始まります。具体的なポイントは以下の通りです。

  • 食事の見直し:動物性脂肪(脂身、バター、チーズ)の過剰摂取を控え、青魚、豆類、野菜を積極的に摂る。
  • 減塩と適正カロリー:高血圧や肥満を防ぐため、塩分は1日6g未満、カロリーは標準体重を維持できる範囲に。
  • 運動習慣:週3〜5回、1回30分以上の有酸素運動を推奨。ウォーキングや水中運動など、無理のない範囲で。
  • 禁煙・節酒:喫煙は動脈硬化を促進し、過度な飲酒も中性脂肪の上昇に繋がります。

生活習慣の改善でも十分な効果が得られない場合は、薬物療法が必要です。

  • スタチン系薬(第一選択薬)
  • エゼチミブ(コレステロール吸収抑制薬)
  • PCSK9阻害薬(注射薬、難治性例に使用)
  • フィブラート系薬(中性脂肪の高い場合に有効)

患者様のリスクレベルにより、目標LDLコレステロール値は異なります。健診ではLDLコレステロール値は140まで基準値範囲内とされますが、例えば心臓の冠動脈に狭窄がある方は、目標LDLコレステロール値は70未満とされています。最新のガイドラインを元に、患者様のご意向も伺い話し合いながら目標値を定めて治療を進めます。

【当院の取り組み】

榊原サピアタワークリニックでは、単に数値を下げるだけでなく、動脈硬化の進行状況を可視化するため、頸動脈エコー検査やABI(血管年齢)検査も積極的に実施しています。必要に応じて心臓CTにて冠動脈の詰まりがないかも検査します。また、管理栄養士と連携し、個別の食事指導を行うほか、生活習慣の改善が長続きするよう、行動変容面談や目標設定サポートにも力を入れています。榊原サピアタワークリニックでは、採血してから約40分でLDLコレステロールをはじめとした採血結果が判明しますので、前回受診時からの生活習慣改善の取り組みや治療の効果をすぐに確認でき、治療へのモチベーション向上にも役立ちます。

【まとめ】

コレステロール異常は、自覚症状がないまま進行する「サイレントリスク」です。しかし、正しい知識を持ち、早めに対処することで、将来の心筋梗塞や脳梗塞を防ぐことができます。われわれは高コレステロール治療のみならず、高コレステロールによる心臓血管病の治療のエキスパートの立場から、予防こそが最大の治療であることを確信しております。健康診断で高コレステロール・高LDLを指摘された方、家族に心疾患の既往がある方、生活習慣に不安のある方は、ぜひ当院の循環器内科にご相談ください。

医師が解説!症状・治療ガイド
【循環器外科】

ご予約・お問い合わせ