医師が解説!症状・治療ガイド

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⑤ “ひとごとではない心不全“ 初期症状に気づくための5つのポイント

みなさん“心不全”と聞くと、“心臓が止まる病気”“心臓がとても悪い状態”と、自分には関係ないこわい病気だと思う事でしょう。でも、実は心不全はもっと身近なもので、さらに心不全とされる患者さんの数は増加の一途をたどり「心不全パンデミック」とも呼ばれる状況になっています。現在は、心不全は「心臓のポンプ機能が低下し、全身に十分な血液を送れなくなる状態」を指します。軽症から重症までありますが、一度発症すると慢性的に進行し、完全に治癒することが難しいため、早期発見と早期治療が非常に重要です。本記事では、心不全の初期症状を見逃さないための5つのポイントを、循環器専門医の視点から詳しく解説します。

監修:小船井光太郎(循環器専門医)

【1. 階段や坂道での息切れ】

これまで問題なく歩けていた距離や階段で、急に息切れを感じるようになった場合、心不全のサインである可能性があります。心臓のポンプ機能が低下すると、体を動かすために必要な酸素を含んだ血液を十分に供給できず、少しの運動でも息苦しさを感じるようになります。特に、階段を上る、坂道を歩くといった動作で息切れが悪化する場合は要注意です。

【2. むくみ(特に足の甲やふくらはぎ)】

心不全では、血液が心臓に戻りにくくなるため、血液がうっ滞し、足の甲やふくらはぎなどの下肢にむくみが出現します。朝よりも夕方にかけてむくみが強くなる場合は、重力による影響で血液や水分が下肢にたまりやすくなっているサインです。靴が夕方になるときつく感じる、靴下の跡がくっきり残るなどの変化にも注意が必要です。

【3. 体重の急激な増加(1~2kg以上/数日間での変化)】

短期間で体重が急増する場合は、むくみ、肺うっ血、胸水などの水分貯留が起きていることがあり、これらは心不全が原因の可能性があります。特に食事内容に変化がないのに体重が増えている場合は、心不全による体液貯留を疑い、早めの受診が必要です。体重の変化は毎日の健康管理の重要な指標であり、心不全管理においても重要なモニタリング項目です。

【4. 夜間の呼吸困難や咳】

心不全が進行すると、横になることで心臓に戻る血液量が増加し、肺に水分がたまりやすくなるため、夜間や横になると呼吸困難や咳が出やすくなります。夜中に息苦しさで目が覚める(夜間発作性呼吸困難)、座ると楽になる(起坐呼吸)、はいずれも心不全を強く疑う代表的な症状とされています。

【5. 倦怠感や動悸】

心不全では、全身に十分な血液が送れないため、疲れやすさやだるさを感じるようになります。また、心拍数が増加し、動悸として自覚することがあります。日常生活の中で以前より疲れやすくなった、ちょっとした動作で動悸を感じる場合も見逃さないようにしましょう。

【当院での心不全診療】

現在の心不全ガイドラインでは、心エコー検査と心不全マーカー検査(BNP/NT-proBNP)は心不全の診断には必須となっております。榊原サピアタワークリニックでは、心不全が疑われる患者様には以下の検査を迅速に実施し、正確な診断を行います。

  • 心エコー検査(心臓のポンプ機能や弁機能の評価)
  • BNP/NT-proBNP検査(心不全マーカー)
  • 胸部レントゲン(肺うっ血や心拡大の確認)
  • 心電図検査(不整脈の有無確認)

これらの結果をもとに心不全の有無を判断し、必要に応じて心臓CTやホルター心電図などの検査を行い心不全の原因を調べます。そのうえで患者様の状態に応じた最適な治療選択肢を患者様と話し合います。治療には、利尿薬、β遮断薬、ACE阻害薬/ARB/ARNI、SGLT2阻害薬などの薬物療法に加え、塩分・水分管理、体重管理、適切な運動指導を組み合わせます。心不全の原因精査や治療には専門的な知識や経験が必要であり、経験に優れた循環器専門医が診療致します。必要に応じて信頼・実績のある連携高度医療機関にご紹介いたします。

【まとめ】

心不全は「ただの年齢のせい」「疲れているだけ」と見逃されがちな疾患ですが、放置すると命に関わる重大な病気です。ご自身やご家族に今回ご紹介した症状が見られる場合は、ぜひ早めに循環器内科の専門医を受診し、適切な検査と治療を受けることをお勧めします。当院では、心不全の早期発見と管理に力を入れておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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【循環器外科】

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