② 高血圧の放置は危険! – 治療の基本と生活改善ポイント
高血圧は、日本人の約3人に1人が該当すると言われるほど身近な疾患でありながら、適切な治療を受けずに放置されやすい代表的な病気です。放置された高血圧は心筋梗塞、脳卒中、心不全、腎不全などの生活を脅かす病気のリスクを上昇させ、寿命を縮める「サイレントキラー」として知られています。この記事では、高血圧のリスク、治療の基本、生活習慣改善のポイント、そして当院での診療方針について詳しく解説します。
監修:小船井光太郎(循環器専門医)
【高血圧とは】
高血圧とは、血圧が慢性的に高い状態を指し、一般的には収縮期血圧(いわゆる上の血圧)が140mmHg以上、または拡張期血圧(下の血圧)が90mmHg以上の状態が続く場合に診断されます。家庭血圧で135/85mmHg以上も高血圧とされます。
【高血圧の放置が招くリスク】
- 心筋梗塞や狭心症などの冠動脈疾患
- 脳出血・脳梗塞などの脳血管障害
- 慢性腎不全や腎硬化症
- 心不全による呼吸困難・浮腫
- 大動脈瘤の破裂リスク上昇
高血圧を放置することで、血管は常に強い圧力にさらされ、少しずつ傷つき、動脈硬化が進行します。その結果、血管自体のみならず大切な脳や心臓、腎臓などの臓器を痛めつけ、上記のような致命的な疾患を引き起こすリスクが高まります。また勃起機能障害などの性機能障害のリスクも上昇させることはよく知られています。
【高血圧の治療方針】
治療は、生活習慣の改善と薬物療法が基本となります。
1. 生活習慣の改善
- 減塩(1日6g未満が目標)
- 適正体重の維持(BMI25未満を目指す)
- 有酸素運動(ウォーキングなどを週150分)
- 禁煙、節酒(日本酒1合、ビール中瓶1本まで)
- 十分な睡眠とストレス管理
2. 薬物療法
生活改善でも血圧が下がらない場合は、降圧薬の使用が検討されます。主に使用されるのは以下の4系統:
- ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)
- ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)
- カルシウム拮抗薬(Ca拮抗薬)
- 利尿薬
患者様の年齢、合併症、腎機能、心疾患の有無などに応じて、専門医が適切な薬剤を選択します。
【当院での高血圧管理】
当院では、血圧の記録(家庭血圧)を重視し、患者様と一緒に「数値と向き合う診療」、「患者様のライフスタイルと意思を尊重した診療」を行っています。血圧手帳やスマホアプリの活用や、自宅での血圧測定のコツ、タイミングについても指導を行っています。また、必要に応じて24時間自由行動下血圧測定(ABPM)を実施し、より正確な診断と治療方針の決定に役立てています。血圧のみならず、全身血管や各臓器の状態を評価するために、ABI検査(血管年齢検査)、心エコー検査、頸動脈エコー、心臓CTなどを行う体制も整えられてます。
【まとめ】
高血圧は、今すぐに症状が出るわけではないからこそ、「いつの間にか重病へ」とつながる怖い疾患です。「ちょっと高いけど大丈夫だろう」と放置せず、定期的な受診と、適切な管理を始めましょう。当院では、患者様のライフスタイルや希望を尊重しながら、継続可能な血圧管理をサポートしています。健康な将来のために、今すぐ対策を始めてみませんか?