胃がんの原因
胃がんの原因はなんと言っても、ヘリコバクターピロリ菌による慢性胃炎です。
ピロリ菌による慢性胃炎の胃がん発生の危険性は、感染のない人に比べ20倍以上高いと言われており、除菌治療を行うことでその危険性を1/4~1/3に低下させることができると言われています。
そのため、胃がんの予防には積極的にピロリ菌除菌を行うことが第一ですが、除菌後も胃がん発生のリスクがゼロになるわけではありません。
2013 年 2 月より慢性胃炎に対するヘリコバクターピロリ菌の除菌が保険適応となり、多くの人が除菌治療を受けていますが、除菌例の増加に伴い、経過観察中に発見される胃がんはむしろ増加傾向にあると考えられます。
早期発見・早期治療の重要性
一般に、除菌成功後は背景粘膜の炎症が消褪するため、早期胃癌の診断は容易になると考えられていましたが、除菌治療によってかえって内視鏡的に診断が難しくなることがあると知られるようになりました。
病変を見逃す可能性を考慮すると、安易に検査間隔を延長することは避けるべきではないと言われています。やはり、早期発見・早期治療がその後の予後を左右します。
除菌治療はしたけれども、しばらく胃カメラ(上部内視鏡検査)を受けていない方は、気軽に当院消化器内科を受診してご相談下さい。
また、食道癌の罹患率は、男性では緩やかに増加傾向にあります。
特に男性では45歳以降、食道癌の罹患者が増加します。食道癌の原因としては、喫煙・飲酒が明らかな発生要因といわれています。
心当たりのある方には禁煙・禁酒の継続を強くお勧めしますが、同時に胃カメラの検査も強くお勧めします。
上記に当てはまらないけれども、何らかの消化器症状(胸やけ・心窩部痛・腹部膨満感・背部痛・嘔気など)があるような方も、一度、消化器内科を受診してご相談される事をお勧めします。
一般的に胃カメラ検査は楽な検査ではありませんが、当院ではご希望者には鎮静剤を使用し苦痛の少ない検査を提供しています。外来部門・人間ドック部門を合わせて、消化器内視鏡専門医による例年多数の検査実績がありますので、安心して受診してください。
胃カメラ検査は午前がメインですが、鎮静剤を使用した胃カメラの検査後に仕事に行くことに不安を覚える方に、午後の検査を提供しています(その場合の朝食は軽食摂取が可能です)。
胃がんの原因
我が国では毎年 13 万人あまりの方が胃がんにかかり、5 万人弱の方が胃がんで亡くなっています。胃がんは早期発見して治療すれば治る病気であり、胃がん検診をうけて早期発見に努める事が大切です。
現在、胃がんの死亡率を減少させることが科学的に認められ、胃がん検診として推奨できる検診方法は、「胃部 X 線検査(胃バリウム検査)」または「胃内視鏡検査」とされています。
最近はピロリ菌感染の有無や胃粘膜の萎縮状態から将来の胃がん発症リスクを簡便に評価する検査として胃ABC 検査(採血での検査)も注目されています。
ただし、この検査はあくまでも胃がんリスクを評価するための検査であり、胃がんの有無をチェックするための検査ではありません。そのため、胃がんリスク検査で問題がなかったからといって、胃がん検診を怠るのは危険です。胃がんリスクとしてピロリ菌感染の有無や萎縮の有無は非常に重要なので、一度は胃 ABC 検査を行った方が良いかもしれませんが、あくまでも補助的な検査です。
胃バリウム検査と胃内視鏡検査のどちらを行ったら良いか。
胃内視鏡検査は精密検査にも使われる方法であり、胃内視鏡検査はバリウム検査に比べて精度が高く、より小さな胃がん、より多くの胃がんが発見される事が期待されています。しかし、内視鏡検査は挿入時の苦痛に加え、咽頭麻酔時のアナフィラキシーショック、出血や穿孔といった偶発症のリスクもあります。
一方、胃バリウム検査は古くから広く行われており、比較的安全性の高い検査ですが、内視鏡と比べるとやや精度が落ちると言われています。それでも、複数のコホート研究で胃がん死亡率減少効果を一貫して示しているエビデンスのある検査です(40-50%の胃がん死亡率減少効果があると言われています)。
その他、胃バリウム検査の長所は、胃の全体像の把握が可能である事、萎縮性胃炎の程度が把握できる事、スキルス胃がん(胃粘膜表層より胃粘膜下層でがん細胞が増殖するたちの悪いがん)の描出がしやすい事があるなどです。また、胃内視鏡検査では鎮静剤を使用しても経鼻カメラで検査を行っても、反射が強く、内視鏡検査での観察が不良(不十分)に終わる方も極稀におり、そのような方は、かえって胃バリウム検査の方が良い場合もあります。
どちらの検査でも構いませんが、胃がん検診は定期的に継続して受診する事が最も大切です。
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胃内視鏡検査 |
胃バリウム検査 |
考えられうる 偶発症 |
咽頭麻酔によるアレルギー
その他、使用する薬剤による副作用
出血・穿孔 |
被ばく※、バリウム誤嚥による肺炎
バリウムによる腸閉塞・消化管穿孔
バリウムによるアレルギー |
診断の精度 |
平坦病変など微小な癌も見つけやすい
必要に応じて、組織検査(顕微鏡検査)
を行い、癌などの診断をつける事ができる |
平坦病変や微小癌の検出は困難
食道病変の検出は苦手
胃全体像の変形を把握しやすく、場合によっては
スキルス癌が描出しやすい事がある
胃の動きなどが観察できる |
短所 |
反射による苦痛 |
場合により内視鏡で再検査を受ける必要がある |
※検査1回当たりの被ばく量は1年間に被ばくする自然放射線量と大差なく、健康に影響を与える放射線被ばくはほとんどないと考えられていますが、妊娠可能性ある女性は検査できません。
バリウム(胃の造影剤)を飲んだ後、検査台の上で体の向きを左右に回転させて、食道から胃、十二指腸までをレントゲン撮影する検査方法です。胃の粘膜に変化が現れにくい癌や、病変が骨、または十二指腸の影になる部分にあるときなどは、見つけることが困難な場合があります。事故防止のため、ドック・胃バリウム禁忌に該当する方は、人間ドックとしては得られる利益に対して危険性が高いと考えられるため、検査をご遠慮いただく方がよいと思われます。
検査を受けることの利益
わが国で行われた研究で胃バリウム検診により40~48%の胃がん死亡率の減少が認められました。胃バリウム検診の感度(がんのあるものをがんと正しく診断する精度)は70~80%、特異度(がんでないものを正しくがんがないと診断する精度)は 85~90%です。
検査をうけることの不利益
放射線の被曝(健康に影響をあたえる量ではありません)、腸閉塞や消化管穿孔などの消化管の合併症があります。誤嚥による肺炎(バリウムの誤嚥は 10万件あたり 37.3件)があります。バリウムなどによって体質的にアレルギー(過敏症;じんましん、息苦しさ、手足が冷たい)が出る方がいます。検査による死亡率は10万件当たり0.015~0.086件です。
その他の不利益については、偽陽性、過剰診断、がんがあってもそれを発見できない場合などがあります。また、胃がん等の確定診断には内視鏡検査が必要になります。
注意点
- 食事:検査前日の夜10時以降は禁食してください。
- 内服薬:高血圧、心臓病の方は、検査開始2時間前までに服用してください。
- 検査後、下剤を飲んでバリウムを排出する必要があります。便が出ずにバリウムが腸の中で固まると腸閉塞や消化管穿孔、腹膜炎など重篤な合併症の恐れがあります。
特に高齢者では合併症が多くなります。便を出すために、帰宅後も水やお茶をたくさん飲んでください。
通常は6時間程度で白っぽい便が出ます。通常便が出るところまで確認してください。
翌日になってもバリウムを含む便が出ない、腹痛などの症状が続く場合には当院にご連絡ください。
- すでに食道・胃・十二指腸の治療中および経過観察中の方は、かかりつけの医療機関での精査をお勧めいたします。
- 自覚症状のある方、健診結果が毎回「要精密検査」に該当される方は、当院消化器外来を受診の上、上部内視鏡検査を受けていただけますようお願いいたします。