1. スクリーニング検査としての便潜血検査
健康診断や人間ドックで広く行われる「便潜血検査」は、大腸がんやポリープ、炎症性腸疾患などを早期に見つけるための一次的な検査です。便の中に目に見えない血液が混じっていないかを調べることで、リスクを早期に把握できます。 ただし、便潜血陽性=がん確定ではありません。痔の出血や感染性腸炎、潰瘍性大腸炎などでも陽性となります。大切なのは、陽性の場合に次のステップである精密検査に進むことです。
2. 精密検査としての大腸内視鏡検査
大腸内視鏡検査(下部消化管内視鏡検査)は、肛門から内視鏡を挿入し、大腸全体を直接観察できる検査です。 近年、大腸がんの罹患者数と死亡者数はともに増加傾向にあり、日本では女性のがん死亡原因の第1位、男性でも上位を占めています。この検査は、大腸がんの早期発見・早期治療、さらには前がん病変であるポリープの切除による「がんの予防」という観点からも極めて重要です。
大腸内視鏡で発見される主な疾患
- 大腸がん
- 腺腫性ポリープ(がん化リスクのある病変)
- 潰瘍性大腸炎
- クローン病
- 虚血性腸炎
- 憩室炎
- 感染性腸炎
- 直腸脱 など
慢性的な下痢や便秘、血便、腹痛、体重減少、貧血などがある方には、早期の検査を強く推奨します。
3. 大腸内視鏡検査のメリット
- 直接観察:病変の形状や色調、出血の有無を確認
- その場で処置:生検・ポリープ切除が可能
- 一度で完結:診断から治療まで同日に実施できる
便潜血検査が「有無を知らせる警告灯」だとすれば、大腸内視鏡は「原因を突き止めて解決に導く精密検査」です。
4. 当院での取り組みと特色
当院では、検査前から検査後まで患者様をトータルでサポートしています。
- 検査前:下剤による腸内洗浄を体質や生活に合わせて指導。イラストガイドや看護師説明で初めての方も安心。
- 検査中:希望者には鎮静剤(静脈麻酔)を使用し、苦痛を軽減。腸の曲がりやすい方にも熟練医師が対応。
- 検査後:画像を見ながら丁寧に結果を説明。病理検査や生活改善指導、ポリープ切除後の食事・内服管理までサポート。
5. 当日の流れ
- 受付と問診:体調確認と同意書サイン
- 下剤服用:液体下剤1.8ℓを服用し腸を洗浄
- 検査実施:20〜30分程度。鎮静剤使用で「眠っている間に終わる」感覚
- 検査後の休憩と説明:鎮静使用時は約1時間休憩 → 医師が結果説明 → ご帰宅
6. 大腸内視鏡検査をお勧めする方
以下に該当する方は積極的な検査をおすすめします。
- 50歳以上の方(大腸がんリスクが高まる年齢)
- 血便がある方、または便潜血陽性の方
- 家族に大腸がんの既往歴がある方
- 長引く便秘・下痢が改善しない方
- 腹痛や体重減少など原因不明の症状がある方
- ポリープを過去に指摘され、経過観察が必要な方
7. 便潜血陽性だった場合 – 精密検査の必要性
便潜血陽性は「危険信号」でありながら、同時に「気づきを与えてくれるサイン」です。
- 大腸がん発見率:約3〜5%
- 腺腫性ポリープ発見率:約30〜50%(切除で予防可能) 当院では便潜血陽性の方に迅速に内視鏡予約を行い、必要に応じて血液・画像検査を併用。安全かつ正確に原因を特定します。
- 検査後は、出血リスクや食事指導など注意点も丁寧に説明し、不安なく日常生活に戻れるよう支援しています。
8. 早期発見が命を救う
まとめますと、
- 便潜血検査:一次検査(スクリーニング)
- 大腸内視鏡検査:二次検査(診断+治療)
- 両者は役割が違うが補完関係にある
症状が出てからではなく「予防検査として」大腸内視鏡を受けることが、大腸がんの早期発見と予防につながります。